観戦雑記

思うままに適当に。

200712信濃GS-群馬DP(オリスタ)

信濃GS 8-4 群馬DP(長野県営)

応援.TV

実況:飯島泰臣 解説:竹内羊一 パーソナリティ:ガンリキ佐橋

 

7月10日(金)から信濃グランセローズ主催試合でも有観客試合がはじまり、今日が観客を入れた二試合目。九州を中心に豪雨の被害が著しい昨今。先週は長野県でも特別警報が発令されるなど、天候問題に頭を悩ませる日々が続くなか、束の間の晴天が長野オリンピックスタジアムのグラウンドを彩った。

 

GSクインティンとDP庄司の両先発

信濃GSは愛媛MPから移籍してきたクインティン、群馬DPは在籍三年目の左腕・庄司のマッチアップ。

クインティンは6月29日の福島RH戦以来の登板。防御率は0.00で失点はまだない。対する庄司は先週、狙いを絞らせない投球がハマって中盤まで信濃GS打線を封じていた。今日も投手戦が予想されるなか、試合は序盤から思ってもいない方角へと進む。

庄司は初回を危なげなく抑えたのだが、次の回からは二番手の井口がマウンドに上がった。アクシデントが想定される展開だが、「怪我ではない」とのリポート。少しでも長いイニングを庄司に託したかった群馬DPだが、投手陣のやりくりに追われることになってしまった。

休養期間を経たクインティンは140後半のツーシームとコーナーに決められるスライダーやSFFを武器にピンチらしいピンチを迎えず、順調にアウトカウントを積み重ねていった。七回は逆球が多くなり、歩かせた先頭打者が内野安打の間に生還して、初の自責点が付いてしまったが、ローテーションの一角を任せるには頼もしい存在だ。

 

BCL初登板の群馬DP・井口

7月9日付で練習生から選手契約に切り替わったばかりの井口。もともと準備していたのか、緊急登板だったのかは定かではないが、一回で降板した庄司の後を受けて二回からマウンドに上がった。

初登板らしく、自分の持ち味を出そうとしていたように思える。ストライクゾーンで速球を中心に勝負する怖いもの知らずのピッチング。打者が一巡する最初の三イニングは抑えていたものの、二巡目に入ると打ち取った当たりでアウトを取れずにランナーが溜まり、巧打者・田島に甘い球を逃さず痛打されたところでお役御免。初黒星が付いた。

自分の力量に自信と課題の両面が顕れた初登板だったが、バッターに向かっていく姿勢は間違いなく評価されているだろう。田代のときもそうだったが、いきなり活きのいい練習生投手が登録される。それが群馬ダイヤモンドペガサス

 

4打数4安打の信濃GS・山本

攻守の要。少し低迷していた打率が一気に三割に乗った。1番の田島とともに、2番の山本が塁に出る機会が増えると信濃GSの得点力は増す――と思われるのだが・・・。

 

4打席4見逃し三振の信濃GS・ヘイドーン

愛媛からやってきたクインティンが結果を残す一方、同じく愛媛産の主砲・ヘイドーンの打撃は深刻かもしれない。野球中継で解説者が打者の立場に立ち、「外角のボールが遠く感じる」と代弁するサンプルケースそのものが今日のヘイドーンに見て取れた。

ベースの外側を通るストライクをことごとく見逃すのだ。第一打席こそ真ん中低めの球で見逃し三振だったが、回を追うごとに群馬DPの捕手・速水の要求は外角に偏っていった。落ちる球には気のないスイング。自分のスイングがほとんどできないまま、ストライクを見送るまま、見逃し三振を四つ積み重ねた。

 

2時間45分直前の攻防

今シーズンの運営ガイドラインのひとつに試合時間の制限がある。試合成立後、七回以降で2時間45分を過ぎたら、そのイニングの終了をもって試合終了となる。

八回裏、信濃GSの攻撃時に2時間45分が近づいていた。先行の群馬DPとしては、早く抑えて九回の攻撃へと望みと繋ぎたい場面だ。安直に考えれば、ボール球は不要で打ち損じてくれればラッキー。刻一刻と減る時間を惜しみたいなか、速水はボール球を要求して高木投手をリードしていた。

結果、打者六人を相手に、2時間45分を回った時点での最後の打者でしかアウトを取れず、八回途中で試合は終了。群馬DPは敗れた。

バッテリーの攻め方については色々と意見があるとは思う。ただ速水は「投手のいいところを引き出したい」と語っていたこともあり、投手主体でものを考えているキャッチャーだ。とにかくストライクを要求して、ラッキーが三つ重なってチェンジになっても、高木の持ち味を引き出したことになるだろうか。アンダースローの技巧派で、ゾーンを広く使う必要があるタイプだ。

お金を払って観戦する対価として、駆け引きのない単調なリードがあったとしたら、それはプロの野球としてどうなのかという問題も付随する。速水はボール球を交えた正攻法を終始全うしたとも取れる。

・・・ボール球の要求以外にも、ボール球が増える場面があったことも併せて記しておく。

 

 

 

200705信濃GS-群馬DP(長野県営)

信濃GS 8-4 群馬DP(長野県営)

応援.TV

実況:飯島泰臣 解説:竹内羊一 パーソナリティ:ガンリキ佐橋

 

今季のBCリーグ初(視聴)観戦。

おそらくは新型コロナウイルスの影響に関係ないと思うのだが、今年から信濃グランセローズ主催試合の動画配信が有料(税込200円)になった。定点カメラのみの垂れ流し放送とは違い、複数のカメラを利用した多角的な映像や、カウントや走者など状況も逐一表示される力の入れよう。昨年からはリプレイも導入されてより一層、専門の野球中継に近づいた。

明治大学野球部キャプテンの経歴を持つ飯島氏の解説までこなしてしまう実況は頭が下がる。プレーヤー時代に培った目線で、ケースに応じた打撃での狙いや選手の心理を鋭く指摘する。動画配信でお金を稼げるスキルだと思っていたが、この度の配信有料化で間接的に実現した形になる。

『100%信濃びいき』と謳いつつ、信濃に厳しいのはご愛敬。独立リーグの試合配信の草分けとして、高いクオリティにこれまでお世話になってきた。お金を払ってでも観る価値はあると思っていたので、来場すらできない現状で微々たる額ながら届けられる機会がむしろありがたい。

有料化とのことで、今年は全主催試合配信するのか気になるところ。

 

前半はGS佐渡・DP庄司の投手戦

信濃GS・佐渡、群馬DP・庄司の両左腕が先発。今シーズン何度も当たる両球団だけに、先発投手がカモにされる展開はお互い避けたい。そんな思惑どおりに、前半は小気味よい投手戦で進んだ。失点は失投絡み。投げミスがなければ抑え込める技量が両投手にはあった。

 

新たな勝ちパターンリレー・名取-高井

昨年は平尾-保田が最後の2イニングを守り切って勝利を積み重ねたが、両投手の退団により勝ちパターンは解体。ゼロから構築することになった。現状は左のサイドハンド名取-右のオーバーハンド高井が務めている。

高井は2018年に平尾・保田とのトレードで入れ替わりに滋賀ユナイテッドBCに移籍し、今年から信濃GSに復帰。名取と高井はともに長野県出身で、数年にわたってプレーしていることもあって地元民から熱い視線を痺れる展開で浴びることになる。

 

仕事人・GS山本健在

七回裏、抑え込まれていた庄司を信濃打線がようやく捉える。三点を返して一点ビハインド。満塁で山本がリリーフした荻野の高めを逃さず振り抜き、前進していた外野の頭を越す走者一掃の三塁打で逆転。ケースバッティングに長けてチャンスにも強い。それが頼りになる仕事人・山本様。

 

五年目を迎えたDP速水

昨年のNPBドラフト指名に漏れ、残留して五年目のシーズンを迎えた群馬DP・速水。高卒四年目の昨年なら、年齢が大学に進んだ同級生と同じように見る物差しになっていた。満23歳の選手がドラフトで指名されるにはこれまで以上のプラスアルファが必要になってくる。99に変わった背番号は背水の陣を思わせる。今日はランナーを置いた場面で失投を逃さず、一発を含む三打点。100㎏を超える巨漢で抑えることが困難なBCL屈指の強打者。日本人の長距離砲はどのカテゴリでも不足しているので、長らく見ていたい存在なのだが。

 

 

 

2020年ルートインBCリーグ運営ガイドラインについて

7月6日分の信濃GS-群馬DPの観戦記を書くにあたって、今季のルートインBCリーグの運営について、掻いつまんでおさらいしておきたいと思ったはいいものの、予想以上に長くなってしまったので、別箇の記事として独立させた。

繰り返しBCL全球団を羅列することもあり、一部表記以外は球団の地域名のみに省略して代用している(例:新潟アルビレックスBC→新潟)。

 

リーグ戦の変容

今年から神奈川フューチャードリームスが新規参入し、全12球団となったBCリーグでは当初、東西2リーグでの運用が予定されていた。しかし新型コロナウイルスが世界規模で日常環境を変えていくなか、BCリーグも三月のオープン戦や練習試合が中止になり、四月の開幕も断念せざるを得なかった。

日本国内の緊急事態宣言が収まり、NPBが6月19日のシーズン開幕に向けて動いているなか、BCリーグでも6月12日に運営ガイドラインと六月分の公式戦日程が発表される。

当初の、そして従来のシーズンとの大きな違いは次のとおり。

  • 前後期制を廃した1シーズン制
  • 2地区制を廃して地区制及びグループ制の導入
  • 一球団あたり全60試合
  • 一ヶ月遅い十月の閉幕
  • 延長戦なし
  • 振替試合は七回制ダブルヘッダー(一部)
  • 七回成立後は制限時間制(ダブルヘッダーは五回成立後)
  • プレーオフは各ラウンド一発勝負
  • ソーシャルディスタンス・来場者のマスク着用等の感染予防対策

 

地区制及びグループ制

各球団、優勝をシーズンの目標として据えるうえで、これからの戦い方がもっとも左右される変更事項が『地区制及びグループ制』の導入である。簡単にまとめてしまうと、「人の往来が激しいと感染リスクが高まるので、近場の相手となるべく多く対戦しましょう」ということだ。

NPBでは当面の間、セ・リーグが六球団が関東なら関東、西日本なら西日本にまとまって移動し、パ・リーグなら同一カード六連戦(例:埼玉西武オリックスを火曜日から日曜日まで六日間)で日程が進む。人の動きを意図的にコントロールすることによって、感染リスクの低減が図られている。

BCリーグは東は福島県から西は滋賀県まで、広範囲に及ぶ。福島球団対滋賀球団のように、東西の地区所属球団が相対するカードは三月に発表されていた日程だと年一度しか組まれていなかったが、改定された日程ではその一試合すらなくなる。

しかし、一部球団では2地区制から新たな3地区制に変わることにより、同地区に組み込まれて試合数が増える現象が起きている。どういうことなのか。もともとの2地区制と3地区制の振り分けを比較してみよう。

 

旧・2地区制(2020年3月発表→廃止)の内訳

【FUTURE-East(東地区)】

  • 福島、茨城、栃木、群馬、埼玉武蔵、神奈川

【ADVANCE-West(西地区)】

  • 新潟、信濃、富山、石川、福井、滋賀

四月開幕で予定されていた当初の2地区制。関東&太平洋側とBCリーグの起源である北信越日本海側で東西が二分されている。

 

新・3地区制(2020年6月改定・発表)の内訳

【東地区】

  • 茨城、栃木、埼玉武蔵、神奈川

【中地区】

  • 福島、新潟、群馬、信濃

【西地区】

  • 富山、石川、福井、滋賀

新たに編纂された地区制によって、FUTURE-Eastの福島と群馬とADVANCE-Westの新潟と信濃が同じ中地区の所属となった。

福島と新潟は昨年まで同地区。群馬と信濃は2014年までの1リーグ時代に年間通じて何度も対戦していた。しかし福島と信濃の組み合わせが異色を放っている。

福島球団が2015年に参入して以来、年に一、二度しか対戦していなかった両球団が、運営改定により(詳しくは後述するが)十試合も対戦することになったのだ。福島は茨城や栃木に隣接しており、長野県の信濃も富山、石川、埼玉、神奈川のほうが近い。高速道路でも新幹線でも、往来は想定されていないのではないか。そんな距離的に微妙な間柄の両球団が同じ地区に括られたのだから珍しい。

 

グループ制の内訳

そして地区制からさらに、最小の単位として二球団で構成されるグループが六つある。

  • グループA:茨城、栃木
  • グループB:埼玉武蔵、神奈川
  • グループC:福島、新潟
  • グループD:群馬、信濃
  • グループE:富山、石川
  • グループF:福井、滋賀

 

試合と対戦カード

運営ガイドラインによると、一チームあたり全60試合を地区のなかだけで消化する。そしてその内訳は、グループ内の相手と40試合、同地区の別グループと各10試合(計20試合)となっている。

グループAの栃木なら、グループA同士の茨城と40試合おこない、同地区で別グループの埼玉武蔵と10試合、神奈川と10試合対戦する。従来あまり対戦のなかった信濃と福島が10試合あたるのはこの方式による。

いくら移動を制限するためとはいえ、同じ相手と40試合も対戦するのは異常だ。全試合の三分の二にあたるだけに、グループを組まされた相手をいかに攻略するかが、今季を戦ううえで重要な課題だ。観る側も意識したい見どころ――という日程が進んでいくなかで、何度も同じカードを目の当たりにするので、否が応でも意識せざるを得ないポイントでもある。

グループAは昨シーズン後期優勝の栃木と通年最下位の茨城の両極端とも思えるペア。一方、グループDは昨シーズン優勝経験のある信濃と群馬がお互いを潰し合う“死のグループ”だ。

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7月5日終了時点での順位表。二球団とも借金を抱えているグループも。


シーズンが終わればすんごい偏った戦績が数字で表れそうな気がしないでもないが、今年に限っては致し方ない。ここまで特殊なレギュレーションでおこなわれるシーズンはなかったのだから、むしろ実験的な一年間を検証するくらいの見方で向き合えば、新たな発見があるかもしれない。

 

プレーオフ(CS)

公式戦が終わると、例年どおり地区CS、リーグCSによってBCLチャンピオンが決定する。ただ今年は三地区制なので、リーグCSではワイルドカードが設けられている。また試合数削減のため、各ラウンド一試合のみの一発勝負で展開される。

 

 

地区CS

グループAの1位VSグループBの1位、というように同地区のグループ1位同士がぶつかる。勝者は地区優勝となりリーグCSに進む。また敗退した三球団のなかで最も『勝敗分数の成績が良いチーム』がワイルドカードとしてリーグCSに進出する。

 

リーグCS

地区優勝三球団+ワイルドカード一球団のトーナメント。決勝戦の勝者がBCLチャンピオンとなる。

 

BCリーグ覇者と四国アイランドリーグ覇者が決まった後は、日本独立リーグ・グランドチャンピオンシップ独立リーグの日本一を賭けて対戦することになるのだが、今年は開催されるか怪しい。例年どおりなら開催の二ヶ月前に詳細がリリースされているので、今年なら九月に発表があると思われる。

 

 

 

200628東北楽天-日本ハム(楽天生命)

東北楽天6-4日本ハム楽天生命)

J SPORTS

実況:中田 解説:有銘兼久

 

中六日での杉浦の好投

日本ハムの先発は杉浦。昨年は先発の日だけ一軍に登録され、最短十日間の間際を置いての起用だったが、一軍登録を外れることなく、中六日でのマウンドとなった。前回の埼玉西武戦ではストレートが安定せず、制球できていたスライダーを軸にした投球で四回をどうにか持ちこたえて無失点に抑えていた。
今回のマウンドはストレートが高めに深く場面が頼繁に見られたが、終始力強い球を投じており、武器として扱えていた。このカードで散々打たれてきた浅村やロメロといった好調な強打者相手にも力勝負で挑み、ストレートで空振りを奪ってアウトカウントを積み上げている姿は逞しく映えた。一週間、投手陣は苦渋を祇めさせられていただけに、最後の試合で一矢報いることができた。

良い時の杉浦は相手をねじ伏せられるだけに、欲を言えばカードの最後ではなく、前のほうで投げさせたい。登板翌日以降のゲームにも残るような影響を相手打者に与えたい。

 

3ストライク目が遠かった石橋

楽天の先発は石橋。コーナーへしっかりコントロールされた球で早いうちから小気味よくバッターを追い込んでいく。ただ解説の有銘が何度も指摘したように「2ストライクからの内容が課題」。空振りを奪えないために三振が増えず、きわどいボールはカットされるかボールゾーンに外れる。結果、甘く入った球を捉えられて球数も増えていった。日本ハムの石橋対策は機能していた。

 

宮西とブラッシュ

四点リードの八回裏に宮西が登板。ブラッシュはここまで三打席連続三振で全く通用していなかったが、 ど真ん中に入ってきたスライダーを振り抜いて、 強烈なライナーをレフト·杉谷のグラブを掠めつつスタンドに叩き込んだ。 浅村やロメロらが日立つ打線の中で、 「構えが遅く、ポールを待つ余裕がない」など不調気味だった。 シンプルに甘い球を振り抜いた結果の今季第一号だった。
一方、宮西は終始制球に苦しんでいて思うような投球ができず。失投でも打たれにくいところにいく持ち味が全く出なかった。

 

四割打者・太田の交代

五回裏の先頭打者・太田に代打が送られた。表の守りで結果は無失点に終わったもののバッテリーミスからピンチを広げる一幕があった。

二塁打を連発し、 打率四割を超える打撃は下位打線の脅威となっていたのだが、 三木監督は手厳しい処置を下した。 これまでの試合でマスクを被る機会は太田が圧倒的に多いが、正捕手を勝ち取ったわけではない。一年間、 ホームを守った実績もない。気を抜けば代わりがいる。 太田の入っていた八番には、試合終了まで打席が三度まわってきた。 打撃が好調なだけに、 太田に多く打順をまわしたいところだが、 目先の勝利に拘らずシーズンを通した競争に徹する三木監督のビジョンが同えた。

 

 

 

200630日本ハム-ソフトバンク(札幌D)

日本ハムソフトバンク(札幌D)

GAORA

実況:近藤祐司 解説:森本稀哲

 

3カード目で初のホームゲームとなった日本ハム。ほぼ一年前に故障離脱した上沢が先発としてマウンドに帰ってきた。

速球は150キロをマークし、先制点は許すものの最少失点に留めてゲームメイク。楽天との六連戦では複数失点から相手のペースを止められない試合が多かっただけに、要所を引き締める先発投手の存在は今後の明るい材料だ。これからしばらくはカード頭で投げるので、連戦の頭から試合が崩れる不安はないだろう。復帰初戦ということで、球数は69球ながら五回での降板となった。体力面さえ克服できればローテーションの大きな柱となるだけに、上沢に懸かる期待は大きい。

 

一方打線はムーア相手にきりきり舞い。少ない得点圏のチャンスで四番・中田が二度の凡退を喫し、その後は両者中継ぎ陣が踏ん張って引き分けに終わった。中田はインサイドを意識されてから、低めのチェンジアップや外角の高めに泳がされて自分の打撃を崩されていた。楽天戦では要所で一発のある打撃を示していただけに、今日の攻めが明日以降どう響くか。

 

中島がプロ通算1000試合出場を達成。札幌ドームの試合で節目を迎えられたが、本来ならばもっと早くに達成しておかしくない選手。今年もショートのスタメンは石井一成が起用される日が続くが、中島にしか出せない味や働きもある。若手に実戦経験を積ませることも育成の一環かもしれないが、ただポジションを譲り渡すのではなく、自分の持ち味や技がいかに勝利に貢献できるかでスタメンの機会は左右されていく。常にラインナップにいた頃が記憶にならないよう、FA宣言残留でチーム内競争に身を投じた中島の挑戦を見守っていきたい。

 

 

 

200627東北楽天-日本ハム(楽天生命)

東北楽天18-4日本ハム楽天生命)

J SPORTS

実況:中田 解説:森山学

 

先発の後を受けた二番手の出来がそのまま勝敗に直結する試合だった。

 

五回表に松井裕樹が中田の2ランで勝ち越しを許し、さらにランナーを得点圏に置いた場面で楽天は酒居にスイッチ。清水をレフトフライに抑えて追加点を防いだ。

 

その裏、先頭の茂木が出塁すると、鈴木大地とブラッシュがヒットで続き、1アウトも取れずに浅村を迎えたところで日本ハムは加藤から玉井にスイッチ。ピンチならば前倒しで登板して火消しを務める玉井の働きぶりは幾度となく目にしてきた。しかし、玉井が詰まらせようと投じたシュートを浅村は力で打ち返し、レフト杉谷のグラブを掠めつつ打球はフェンスを越えた。逆転の3ランホームラン。リードを奪った安堵はほんの一瞬で吹き飛んだ。

 

玉井はリリーフを失敗しても、傷口は最小限に留められるピッチャーとして、昨シーズンはフルに働いた中継ぎの柱だ。しかし今日は後続をかわしきれず、三つのアウトを奪う前に降板。終わってみれば楽天は打者一巡の猛攻で、1イニング10得点のビッグイニングとなってしまった。

 

先発が五回を持たず、表裏で似たようなシチュエーション。失点するか抑えるかの分岐点をそれぞれ綺麗に分かち合った結果がそのまま点差に表れた。

 

七打点の浅村を筆頭に、ロメロや太田も当たっていてどこからでもチャンスを作れて、どこででも点が取れる楽天打線は前評判通りの怖さがある。投手も後ろは盤石で、バラエティに富んだ中継ぎが揃っている。

 

一方で、気掛かりなのが今日先発した松井裕樹。抑えでは150キロ近い速球とスライダー、チェンジアップのどの球でも空振りが取れていた。しかし長いイニングを投げる先発に回って、これまであまり見なかったカーブやフォークを交えた攻め方になっているのだが、どうもうまく噛み合っていない。球速も140前半で、抑えているわけでもないのによく抜けていた。

相手からの視点で見ると、後ろにいた厄介な左投手がいなくなり、攻めやすい先発投手が一枚増えたと感じるだろう。練習試合から芳しい結果が出ていないようだが、今後松井がどのように一年間投げていくのか。今シーズンの楽天というチームを見るうえで一つのポイントとなる。

200624東北楽天-日本ハム(楽天生命)

東北楽天5-2日本ハム楽天生命)

J SPORTS

実況:中田 解説:川崎憲二郎

 

三回裏途中から。

 

楽天移籍後初登板の涌井とプロ初登板の河野の両先発。

 

プロ初勝利を賭けるルーキーのために、打線は涌井からどれだけリードを奪えるか。河野はどこまで投げられるか。右の強打者が並ぶ楽天打線にどこまで通用するかに注目していた。

 

中田の一発と大田のタイムリーで日本ハムが先行。四回終了時でリードしており、五回を投げきれれば、勝利投手の権利が手に入る。新人の登竜門ともいえるシチュエーションに、河野は呑まれてしまった。

 

九番の辰己が四球で出塁。ランナーを置いて上位に回る。茂木のファウルフライで辰己が二塁を陥れる好走塁。続くブラッシュはカウントを悪くしたところで歩かせ、鈴木大の打席で今度は辰己が三盗を決める。ひとつのフォアボールからやりたい放題に掻き回され、息をつく間もなく鈴木大がタイムリー、浅村に逆転の3ランと試合がひっくり返ってしまった。

 

出してはいけないランナーを歩かせて致命傷を負った新人の河野。先制を許しながら淡々と投げ続け、試合を壊さず作り上げたベテランの涌井。終わってみれば好対照な投げ合いだった。

 

「コースを狙いすぎ」「もっとコースは真ん中で低めに集めれば」とは河野に対する川崎氏の解説。申告敬遠を除いて与えた四球は五回で五つ。丁寧にいきすぎかなと感じていた。

また浅村の逆転弾は思い切り踏み込んで打たれている。横振りの左腕なら、右打者の内角を突くクロスファイアを交えられれば、易々と自分のスイングをされずに済む――とか河野と同じ高卒社会人経由の公文を思い浮かべて思ったり。

 

今日の試合で楽天は辰己・涌井・浅村の活躍が目を引いたが、それだけではない。強打者のロメロがレフト前の打球で二塁を陥れる走塁意識を見せれば、キャッチャーで八番の太田がロメロを返す長打。今年の楽天打線が分厚いことは、開幕前に予めイメージしていたが、対峙してみると確かに心休まる暇がない。極めつけは小深田の守備。渡邉諒のヒット性のハーフバウンドを飛びついて処理して、ストライクの一塁送球。守りにも穴はないのか。

 

楽天相手にいきなり二連敗を喫したが、力の差を痛感させられるのに十分な二試合だった。しばらくは同じ相手と六連戦もこなさなくてはならないのだから、明日は立て直さないとズルズルと尾を引きかねない。先発・バーヘイゲンに懸かる期待は大きい。