2020年ルートインBCリーグ運営ガイドラインについて
7月6日分の信濃GS-群馬DPの観戦記を書くにあたって、今季のルートインBCリーグの運営について、掻いつまんでおさらいしておきたいと思ったはいいものの、予想以上に長くなってしまったので、別箇の記事として独立させた。
繰り返しBCL全球団を羅列することもあり、一部表記以外は球団の地域名のみに省略して代用している(例:新潟アルビレックスBC→新潟)。
リーグ戦の変容
今年から神奈川フューチャードリームスが新規参入し、全12球団となったBCリーグでは当初、東西2リーグでの運用が予定されていた。しかし新型コロナウイルスが世界規模で日常環境を変えていくなか、BCリーグも三月のオープン戦や練習試合が中止になり、四月の開幕も断念せざるを得なかった。
日本国内の緊急事態宣言が収まり、NPBが6月19日のシーズン開幕に向けて動いているなか、BCリーグでも6月12日に運営ガイドラインと六月分の公式戦日程が発表される。
当初の、そして従来のシーズンとの大きな違いは次のとおり。
- 前後期制を廃した1シーズン制
- 2地区制を廃して地区制及びグループ制の導入
- 一球団あたり全60試合
- 一ヶ月遅い十月の閉幕
- 延長戦なし
- 振替試合は七回制ダブルヘッダー(一部)
- 七回成立後は制限時間制(ダブルヘッダーは五回成立後)
- プレーオフは各ラウンド一発勝負
- ソーシャルディスタンス・来場者のマスク着用等の感染予防対策
地区制及びグループ制
各球団、優勝をシーズンの目標として据えるうえで、これからの戦い方がもっとも左右される変更事項が『地区制及びグループ制』の導入である。簡単にまとめてしまうと、「人の往来が激しいと感染リスクが高まるので、近場の相手となるべく多く対戦しましょう」ということだ。
NPBでは当面の間、セ・リーグが六球団が関東なら関東、西日本なら西日本にまとまって移動し、パ・リーグなら同一カード六連戦(例:埼玉西武-オリックスを火曜日から日曜日まで六日間)で日程が進む。人の動きを意図的にコントロールすることによって、感染リスクの低減が図られている。
BCリーグは東は福島県から西は滋賀県まで、広範囲に及ぶ。福島球団対滋賀球団のように、東西の地区所属球団が相対するカードは三月に発表されていた日程だと年一度しか組まれていなかったが、改定された日程ではその一試合すらなくなる。
しかし、一部球団では2地区制から新たな3地区制に変わることにより、同地区に組み込まれて試合数が増える現象が起きている。どういうことなのか。もともとの2地区制と3地区制の振り分けを比較してみよう。
旧・2地区制(2020年3月発表→廃止)の内訳
【FUTURE-East(東地区)】
- 福島、茨城、栃木、群馬、埼玉武蔵、神奈川
【ADVANCE-West(西地区)】
- 新潟、信濃、富山、石川、福井、滋賀
四月開幕で予定されていた当初の2地区制。関東&太平洋側とBCリーグの起源である北信越&日本海側で東西が二分されている。
新・3地区制(2020年6月改定・発表)の内訳
【東地区】
- 茨城、栃木、埼玉武蔵、神奈川
【中地区】
- 福島、新潟、群馬、信濃
【西地区】
- 富山、石川、福井、滋賀
新たに編纂された地区制によって、FUTURE-Eastの福島と群馬とADVANCE-Westの新潟と信濃が同じ中地区の所属となった。
福島と新潟は昨年まで同地区。群馬と信濃は2014年までの1リーグ時代に年間通じて何度も対戦していた。しかし福島と信濃の組み合わせが異色を放っている。
福島球団が2015年に参入して以来、年に一、二度しか対戦していなかった両球団が、運営改定により(詳しくは後述するが)十試合も対戦することになったのだ。福島は茨城や栃木に隣接しており、長野県の信濃も富山、石川、埼玉、神奈川のほうが近い。高速道路でも新幹線でも、往来は想定されていないのではないか。そんな距離的に微妙な間柄の両球団が同じ地区に括られたのだから珍しい。
グループ制の内訳
そして地区制からさらに、最小の単位として二球団で構成されるグループが六つある。
- グループA:茨城、栃木
- グループB:埼玉武蔵、神奈川
- グループC:福島、新潟
- グループD:群馬、信濃
- グループE:富山、石川
- グループF:福井、滋賀
試合と対戦カード
運営ガイドラインによると、一チームあたり全60試合を地区のなかだけで消化する。そしてその内訳は、グループ内の相手と40試合、同地区の別グループと各10試合(計20試合)となっている。
グループAの栃木なら、グループA同士の茨城と40試合おこない、同地区で別グループの埼玉武蔵と10試合、神奈川と10試合対戦する。従来あまり対戦のなかった信濃と福島が10試合あたるのはこの方式による。
いくら移動を制限するためとはいえ、同じ相手と40試合も対戦するのは異常だ。全試合の三分の二にあたるだけに、グループを組まされた相手をいかに攻略するかが、今季を戦ううえで重要な課題だ。観る側も意識したい見どころ――という日程が進んでいくなかで、何度も同じカードを目の当たりにするので、否が応でも意識せざるを得ないポイントでもある。
グループAは昨シーズン後期優勝の栃木と通年最下位の茨城の両極端とも思えるペア。一方、グループDは昨シーズン優勝経験のある信濃と群馬がお互いを潰し合う“死のグループ”だ。
シーズンが終わればすんごい偏った戦績が数字で表れそうな気がしないでもないが、今年に限っては致し方ない。ここまで特殊なレギュレーションでおこなわれるシーズンはなかったのだから、むしろ実験的な一年間を検証するくらいの見方で向き合えば、新たな発見があるかもしれない。
プレーオフ(CS)
公式戦が終わると、例年どおり地区CS、リーグCSによってBCLチャンピオンが決定する。ただ今年は三地区制なので、リーグCSではワイルドカードが設けられている。また試合数削減のため、各ラウンド一試合のみの一発勝負で展開される。
地区CS
グループAの1位VSグループBの1位、というように同地区のグループ1位同士がぶつかる。勝者は地区優勝となりリーグCSに進む。また敗退した三球団のなかで最も『勝敗分数の成績が良いチーム』がワイルドカードとしてリーグCSに進出する。
リーグCS
地区優勝三球団+ワイルドカード一球団のトーナメント。決勝戦の勝者がBCLチャンピオンとなる。
BCリーグ覇者と四国アイランドリーグ覇者が決まった後は、日本独立リーグ・グランドチャンピオンシップで独立リーグの日本一を賭けて対戦することになるのだが、今年は開催されるか怪しい。例年どおりなら開催の二ヶ月前に詳細がリリースされているので、今年なら九月に発表があると思われる。